半沢直樹によろしく

日々の苛立ちだったりささやかな喜びだったり

新型コロナが経済に与える影響と中小企業の経営者が今からとるべき対策について

連日の新型コロナウイルスの状況と報道を受け、経済への影響がいよいよ深刻化してきそうです。

リーマンショックの際には、金融経済から実態経済に景気の落ち込みの波が急激に襲ってきました。
金融機能が非常に脆弱になり、普段なら資金調達、特に銀行借入の必要のないような一部上場企業から、しかも金利もある程度の水準でいいからと申込が来るくらいの状況でした。上場企業からしても、当然先行き見通しが立ちにくいことでの前もった調達という意味合いもあったでしょうが、むしろ金融機能の麻痺からくる調達リスク回避の意味合いが大きかったように思います。

東日本大震災のときは、何はともあれ復興、再建に向けた資金対応、サプライチェーンの局地的断絶と売上が立たない中での資金繰りのための資金対応が中心でした。
震災後の自粛ムードもありながらも、逆に頑張ろう東北!のような盛り上がりも一時的ではあれど、復興需要という形であらわれてはいました。


さて、今回のコロナはどうでしょうか。
ヒトとモノが動かなくなり、結果金が回らず、それでいていつになったら終わるのかという目処が立たない状況は、リーマンショックや大震災よりも酷いかもしれません。


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足元では日に日に取引先からの不安の声や今後の業績のこと、資金繰りに関する相談が増えてきております。
旅館、飲食店、ホテル、結婚式場等ではそもそも多数のキャンセルや予約が入らない状況。
ドタキャンについては約款や顧客との相談ではあるもののキャンセル料等は一部確保できている様子ではあるものの、この先の売上見通しが全く立たない一方で、人件費を中心とした毎月の固定費負担はそれなりに重たいため、かなり危機的状況です。
タクシー業者やバス業者等も観光客やビジネス利用が激減。
日銭商売と言われる業界といえども、売上が全くと言っていいほどたたない場合、どうしようもない状況です。。
製造業であれば部材が中国から入ってこないことにより、受注はきているものの納品できないために売上が立たず資金繰りは忙しくなる状況。
しかも万一従業員でコロナが発症した場合、工場閉鎖となれば受注していたもののみならず将来にわたって失注する可能性もあり、気が気でない経営者が多数いらっしゃいます。
TOTOのホームページにおいても、トイレやシステムキッチンの日本における納品が遅れている状況とのことで、例えば家を建てたとしても水回り関係を設置できず家の引き渡しができないことも今後想定されます。

【お知らせ】弊社商品納期に関するご案内 | 重要なお知らせ | TOTO


コンビニの経営者は昨今のトイレットペーパーのデマの影響から、コンビニのトイレに置いてあるトイレットペーパーが盗まれる事態にもなっている様子。

さて、こうした状況において、最も厳しい影響を受けるのは、言葉を選ばずに言えば社会的・経済的弱者から始まっていきます。
様々なニュース記事で出ているように、非正規労働の方は忽ちに出社抑制を受ける一方、生活費を稼げない状況に追い込まれることになっています。
大企業、中小企業問わず、ヒトとモノが動かない中で、足元で売上を維持するのは正直無理です。企業努力によって売上減少に合わせて経費を削減しようにも、固定費の削減には限界があります。
特に担当している多くの経営者は、歯を食いしばって従業員の雇用については守ろうと懸命に努力していらっしゃいます。


企業毎に当然対策の仕方や対策の程度に違いはあれど、イチ金融マンとして特に中小企業の経営者が最低限何をすべきかをお伝えしたいと思います。

①毎月のキャッシュの流出(人件費や買掛金/未払金決済、水道光熱費や通信費、銀行借入の返済等すべて)を精査し、現状の手元資金(定期預金等含む)であと何日持つかを把握すること。

②前年の2月、3月、4月単月の損益状況を確認すること。

①②は、自社の現状分析を冷静にする、ということです。
金融機関の人間は、基本的には困っている経営者を支援したい、と思っている人が多い(はず)です。
しかし、「コロナで売上が全く立たないし見通しが立たない・・・」と言われたときに、あとどれくらい金融支援をせずに持ちこたえられるのか、その根拠は前年同時期と比べて妥当か、程度については最低限数字で状況説明してもらうことによって、審査の検討期間を把握したり、新規融資or返済を一時的にストップするにしても初見の判断がつけやすくなります。


セーフティネット保証4号認定・5号認定を取得可能であれば取得しておく。
④メインバンクの担当者に今後の資金繰りのことについて相談する。場合によってはメインバンク以外の担当者にも相談してみる。
⑤日本政策金融公庫に対して取引がなくても相談してみる。

令和2年3月2日に新型コロナに起因して影響を受けている企業について、4号認定・5号認定が認められるようになりました。
細かな要件はありますが、本店所在地の市町村商工担当課に相談のうえ、認定をもらえるならばもらっておきましょう。提出書類はそれほど複雑ではないです。自治体のホームページで探してみてください。4号認定・5号認定取得により、保証協会の通常枠に別枠で申し込みが可能となります。金融機関にとっても、信用保証協会の保証付で対応となれば融資のハードルは格段に下がります。
www.chusho.meti.go.jp


④自社をよく知っているメインバンクに相談してみましょう。私がここで書いていることよりもはるかに、自社の状況を踏まえたアドバイスをしてくれるはずです。もしメインバンクが不適当な対応をとるならば取引のある金融機関に手当たり次第に何かしら聞いてみてください。他社の状況でもよいですし、自社の今後についてでも結構です。情報収集と取引銀行ごとの自社に対する考え方を知る良い機会でもあります。本当に状況がひっ迫している場合においては、なりふり構っている場合ではないです。
取引がない場合でも、日本政策金融公庫は政府系金融機関として、制度融資を活用した融資をしてくれる可能性があります。基本的には決算書3期分と足元の状況が確認できる資料、通帳のコピー等を準備のうえ、まずは相談してみるのも手です。取引銀行に相談するにしても新規の金融機関に相談するにしても、先ほどの現状分析をしておかないと話が進みませんので、繰り返しになりますが説明できるようにしておきましょう。
とにかく、現状分析を的確に行った後は、限られた時間で今後の事業継続に向けた選択肢を広げるための対策をとるべきです。資金が枯渇に近づけば近づくほど、できる選択肢は限られていきます。


さいごに、経産省のHPをリンクしておきます。ここに一通りのことはまとまっています。悲観する状況ではありますし、先が見通せない状況でもありますが、私も銀行員の端くれとして担当しているお客様を微力ながらご支援したいと思っておりますし、銀行員の使命でもあると思います。
こんな時こそ、銀行員にできること、銀行員だからこそできることを考えながら明日からも仕事に取り組んでいきたいと思います。
www.meti.go.jp