半沢直樹によろしく

日々の苛立ちだったりささやかな喜びだったり

あれから9年という事実

震災から9年、ちょうどそのころは駆け出しのバンカーでした。

リーマンショックの余波が収束しつつある状況の中で、当然日常が非日常に変わりました。

 

幸いにして私自身も家族も直接的な被災を免れましたし、運よく避難所生活も送らずに過ごすことができました。

その日は支店に泊まる人もいましたが、私は電車が止まっていたために2時間近くかけて歩いて帰りました。

土日を挟んで月曜日も電車は止まったままで、先輩の車に乗せてもらって支店まで行った記憶があります。

その後は取引先からの借入相談や元金返済ストップの相談、そもそも連絡が一時的につかない取引先、そして支店の営業車にガソリンを入れるために空いているガソリンスタンドに並ぶ等、多忙さの中で次第に非日常が日常になってきました。

 

あれから9年、特に東北地方の被災3県は道路や住宅等ハード面の整備は一定程度進み、事業者もグループ補助金と呼ばれる補助金を活用し、工場や事務所、店舗の再建に取り組まれた事業者がいらっしゃる他、大なり小なり公的支援を受けて再建に向けて懸命に取り組んでこられました。

一方、このグループ化補助金については現在もなお被災企業にはついて回るものでして、以下の記事を参照します。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200307-00000025-mai-soci

 

補助金」と名がついていますが、復旧にかかる必要資金の一定割合は国や県が補助金として交付するものの、一部については自己負担を求めている制度となっており、復旧の際に手元に資金が多くない場合(大抵がそうですが)、無利息かつ数年の返済据置期間を設けて資金を借りられるものとなっています。

つまり、数年後からは自己負担分の返済が開始となり、その分の資金繰りが忙しくなるのです。

当初制度を作った際は、数年間という時間の中で、売上と利益を回復してもらい、結果としてその返済以上のキャッシュフローを産み出していくことを目的としていたのでしょうが、現実は十分な売上回復には至らず、返済が開始されたことにより苦しい状況に陥っているわけです。

将来の事業計画を精緻に計算せずに後先考えずに目先の補助金で再建を果たそうとしたのでは?と経営者を責めたいわけでもなければ、こうなることは当初から予想できただろうと官僚を批判したいわけでもなく、自分を含めた銀行員はそんな中何ができたんだろうと過剰に銀行員を卑下したいわけでもなく、その時点ではそれがベストな行動だと思って必死にそれぞれが持ち場で頑張っていたんだろうと思っていたいのです。

 

非日常のままの生活は非常に消耗します。人間の「都合の悪いことは忘れる」という機能は、非日常を日常に戻してくれる大切な機能なのかもしれません。

 

14時46分の営業中に取引先の事務所で社長とともに1分間の黙とうを捧げ、日常に戻っているならば、この1分間だけでも非日常に戻らないと、と思った一日でした。

 

明日からも頑張ります。